【正職員化にかかる経費100%補助】正社員化を加速させる「有期実習型訓練」完全ガイド
- 大輔 山本
- 2月7日
- 読了時間: 6分
人材不足が深刻化する中、契約社員やパート・アルバイト等の「有期契約労働者」を育成し、正社員(正規雇用労働者)として定着させることは企業の急務です。 今回は、人材開発支援助成金の中でも、非正規雇用のキャリアアップに特化した「有期実習型訓練」について、制度の仕組みから受給のポイントまで、解像度を高く解説します。
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1. 有期実習型訓練とは?
「有期実習型訓練」は、正社員経験の少ない有期契約労働者等を対象に、正規雇用労働者等への転換を目的として実施する職業訓練です。 最大の特徴は、座学(OFF-JT)と実技(OJT)を組み合わせることで、実践的なスキルを効率よく習得させられる点にあります。
【この助成金の狙い】
• 非正規雇用労働者のスキルアップとキャリア形成
• 企業内での正社員転換の促進
• 即戦力人材の確保
令和7年4月1日からの重要な変更点
改正により、助成要件が厳格化されました。訓練終了後、対象労働者を正規雇用労働者等へ転換した場合に限り助成対象となります。 ※転換しなかった場合、原則として不支給となりますが、要件を満たせば助成率の低い「人材育成訓練」として救済される措置もあります。
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2. 驚きの助成率と助成額
本コースは、正社員転換という高いハードルがある分、他のコースよりも手厚い助成率が設定されています。
(1) 経費助成・賃金助成・OJT実施助成の3階建て
中小企業の場合、訓練にかかった経費の75%が戻ってくるほか、訓練期間中の賃金助成、さらにはOJTを実施することに対する定額助成まで支給されます。
助成項目 | 内容 | 中小企業 | 大企業 |
① 経費助成 | 入学金・受講料・教科書代など | 75% | 60% |
② 賃金助成 | OFF-JT受講時間に対する賃金補填 | 800円 /時 | 400円 /時 |
③ OJT実施助成 | OJT実施に対する定額支給(1訓練あたり) | 10万円 | 9万円 |
(2) 賃金アップ等による「加算」
訓練終了後1年以内に、対象者の賃金を5%以上アップさせる等の要件を満たすと、さらに助成額が上乗せされます。
• 経費助成:中小企業 100%(+25%)、大企業 75%(+15%)
• 賃金助成:中小企業 1,000円(+200円)、大企業 500円(+100円)
• OJT実施助成:中小企業 13万円(+3万円)、大企業 12万円(+3万円)
※経費助成の実質負担が0円になる可能性がある、非常に強力な支援制度です。
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3. 「誰」が対象になるのか?(対象労働者の詳細)
単に「契約社員なら誰でも良い」わけではありません。以下の要件をすべて満たす必要があります。
1. 有期契約労働者等であること
◦ 申請事業主に雇用されている期間の定めのある労働者(パート・アルバイト含む)。
◦ または、派遣労働者(派遣活用型の場合)。
2. 正規雇用労働者等として雇用することを約していないこと
◦ 採用当初から「正社員として採用する」と約束されている人は対象外です(あくまで、訓練結果を見て転換を検討する人である必要があります)。
3. ジョブ・カードを作成し、キャリアコンサルティングを受けていること
◦ 訓練開始前に、キャリアコンサルタントによる面談を受け、訓練の必要性を認められる必要があります。
4. 「職業能力形成機会に恵まれなかった者」であること
◦ 原則として、訓練実施分野において、過去5年以内に概ね3年以上通算して正規雇用された経験がない者。
◦ または、過去5年以内に短期間(1年未満)の離転職を繰り返している者など。
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4. どのような訓練計画が必要か?(カリキュラム要件)
「有期実習型訓練」として認められるためには、以下の基準を満たすカリキュラムを組む必要があります。
• 実施期間:2か月以上
• 構成:OFF-JT(座学等)と OJT(実務実習)を組み合わせること(どちらか一方だけは不可)
• 時間数:総訓練時間数を6か月に換算したとき、425時間以上であること
◦ 計算例:3か月の訓練なら、総時間が213時間以上必要です。
• 比率:総訓練時間に占めるOJTの割合が 1割以上9割以下 であること
• OJTの要件:
◦ 指導担当者(OJT指導員)を配置すること。
◦ OJT日誌(実施状況報告書)を毎日作成すること。
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5. 申請から受給までのフロー
失敗しやすいポイントを補足しながら手順を解説します。
Step 1: キャリアコンサルティングの実施【重要】
• 訓練計画を作る前に、対象労働者に対してジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを実施します。
• 注意:電話やメールのみ、集団形式での実施は認められません。必ず個別対面(またはWEB面談)で実施してください。
Step 2: 計画届の提出(訓練開始の1か月前まで)
• 提出期限:訓練開始日の6か月前から1か月前までの間。
• 提出書類:職業訓練実施計画届、訓練カリキュラム、ジョブ・カード(写し)、対象労働者一覧など。
• ポイント:この時点で「正社員転換の予定時期」も計画に盛り込みます。
Step 3: 訓練の実施
• 計画通りにOFF-JTとOJTを実施します。
• OJT日誌:訓練生本人が毎日記入し、指導員が確認印を押すなど、厳格な管理が必要です。「単純作業の繰り返し」とならないよう、指導内容を具体的に記述してください。
Step 4: 評価・正社員転換
• 訓練終了後、ジョブ・カード様式(職業能力証明シート)を用いて能力評価を行います。
• 評価結果に基づき、正規雇用労働者等へ転換します(雇用契約書を新たに締結)。
Step 5: 支給申請(訓練終了後2か月以内)
• 転換後の雇用契約書や、賃金台帳、出勤簿、訓練日誌などを添えて申請します。
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6. よくある質問とプロのアドバイス
Q. eラーニングは対象になりますか?
A. 基本的に、有期実習型訓練のOFF-JTは「対面(通学制)」または「同時双方向型オンライン(Zoom等)」である必要があります。ただし、これらに付加的にeラーニングを実施することは可能です(その場合、eラーニング部分は経費助成のみ対象となり、時間数にはカウントされません)。
Q. 正社員転換しなかった場合はどうなりますか?
A. 原則として「有期実習型訓練」としては不支給となります。ただし、事前に「職業能力開発推進者の選任」「事業内職業能力開発計画の策定・周知」等の要件を満たしていれば、助成率は下がりますが「人材育成訓練」として審査を受けることが可能です。
Q. キャリアアップ助成金との併用は可能ですか?
A. はい、非常に相性が良いです。 「有期実習型訓練」で訓練コストを賄い、その後正社員に転換して「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」で転換助成金(1人あたり57万円~80万円)を受給するというダブル受給が可能です。計画届の提出時にキャリアアップ計画書を兼ねることもできます。
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【まとめ】 有期実習型訓練は、コストを抑えながら契約社員を即戦力の正社員へと育て上げるための強力なツールです。ただし、カリキュラムの作成や日々の進捗管理(OJT日誌等)には手間がかかります。 計画段階から社労士等の専門家と連携し、無理のないスケジュールで実施することをお勧めします。
著者:山本大輔
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